『育児・介護休業法』『男女雇用機会均等法』の改正に伴う実務対応上の留意点

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「改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法」が、本年1月1日より施行されております。すでに、就業規則や労使協定の見直し等については、各会社様とも対応済みとは思われますが、今回の改正内容は、その解釈に誤解が生じたり運用面で疑義が生じたりする箇所も多いように感じております。そこで今回は、育介法・均等法の改正内容を今一度確認するとともに、実務対応上の留意点等について解説していきます。

今回の主な改正点

今回の改正は、1.介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備 2.多様な家族形態・雇用形態に対応した育児期の両立支援制度等の整備 3.妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備という3つの雇用環境を整備することが大きな目的となっています。

そして、その具体的な改正内容としては、介護休業関連を中心にして、主に以下の6つについて新設あるいは変更がなされています。

  1. 介護休業の分割取得
  2. 介護休暇及び子の看護休暇の半日単位取得
  3. 介護のための所定労働時間の短縮等の措置
  4. 介護のための所定外労働の免除
  5. 育児・介護休業の取得要件及び対象家族の範囲拡大
  6. マタハラ等の防止措置

実務対応上の留意点

それでは、上記6つの改正内容と実務面での留意点を中心に説明していきます。

(1)介護休業の分割取得

これまで介護休業は、対象家族1人につき原則として1回に限り、通算93日まで取得可能でした。例外的に、要介護状態からいったん脱して、その後再び要介護状態となった場合は2回以上取得可能ではありましたが、実際にそのようなケースはまれであり、通常は1回のみしか取得できませんでした。今回の改正法では、要介護状態が継続していても、介護休業を3回を上限として通算93日まで分割取得することが可能となっています。

むろん、法律を上回る措置をとることは差し支えありませんので、通算取得日数や分割回数において、例えば「通算93 日、分割5回まで」とすることも、「通算120 日、分割3回まで」とすることも可能です。但し、1回の取得期間については、労働者が申し出た期間取得できることになっているため、1回あたりの最低取得期間、例えば最低1週間以上とするなどの制限を設けることは認められていませんので注意が必要です。(法律を上回る部分、即ち93日を超える日数や分割4回からについて、1回あたりの最低取得期間を設定することは可能です。)

また、改正日前後で介護休業取得する場合の経過措置ですが、[1]平成29年1月1日以前に93 日の介護休業を1回取得している場合、通算93日という法定の上限日数は今回変更ありませんので、平成29年1月1日以降、同一の対象家族について新たに介護休業を取得することはできません。[2]平成29年1月1日以前に30 日の介護休業を1回取得している場合は、平成29年1月1日以降、同一の対象家族について残り2回、通算63日の範囲内で介護休業を取得することができます。

(2)介護休暇及び子の看護休暇の半日単位取得

介護休暇や子の看護休暇は、これまで1日単位での取得を認めればよいとされていましたが、改正法では、半日単位での取得も認めなければならないことになりました。

運用上問題となるのが「半日」の時間のカウントです。この半日とは所定労働時間の2分の1の時間を指します。例えば、所定労働時間8時間であれば、半日は4時間となりますが、所定労働時間が7時間45分の会社の場合、1時間未満の端数
は切り上げた上でその2分の1の時間が半日ということになりますので、この場合も結局8時間÷2=4時間ということになります。

なお、会社の始業・終業時刻や休憩時刻の関係で、昼の休憩時間を挟んで午前半日休暇・午後半日休暇といった区分で取得できるようにすることも可能です。例えば、始業時刻午前9時、昼休憩正午~午後1時、終業時刻午後6時といった場合、午前半日休暇は3時間、午後半日休暇は5時間という形にすることもできます。但し、その場合は労使協定で半日の定義を明確にしておく必要があります。(年次有給休暇の半日単位での取得を認めている会社の場合、昼休憩をはさんで午前半日休暇・午後半日休暇と分けていることも多いかと思いますので、年次有給休暇の半日休暇の取り扱いと合わせておかれた方が混乱は少ないでしょう。)

この場合、賃金控除については注意が必要です。賃金は、あくまで実際に就労しなかった時間分の控除になります。従って、上記例で、労使協定により午前半日は3時間、午後半日は5時間とした場合は、午前半日を2回取得すれば合計3時間×2=6時間分の賃金控除ですが、午後半日を2回取得すれば合計5時間×2=10時間分の賃金控除となり、合計日数では同じ1日分の休暇取得であっても、賃金控除額に違いがでることになります。

(3)介護のための所定労働時間の短縮等の措置

これまで、介護のための所定労働時間の短縮措置等は、介護休業と併せて93日間の範囲で取得することが可能となっていましたが、改正法では、介護休業とは切り離された独立の制度として設定することが義務付けられています。措置の内容は、[1]所定労働時間の短縮の他、[2]フレックスタイム制度[3]始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ[4]労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度のいずれか1つを会社が選択するということは改正法でも変更ありませんが、利用期間を「介護休業とは別に、利用開始から3年間の間で少なくとも2回以上」としなければなりません。

なお、この3年間の起算日は、「労働者が介護のための所定労働時間の短縮等の措置の利用を申し出た日」となります。また、(1)で述べたことと同様に、法律を上回る措置を導入することは何ら問題ありませんので、「3年間で3回まで」「5年間で何回でも」といった設定もむろん可能です。

また、1回に申し出ができる期間の上限については、法律上は規定がなく、3年間以上の期間に2回以上の利用が可能な制度となっていれば、1回に申出できる期間の上限を会社が設定しても差し支えないこととされています。

(4)介護のための所定外労働の免除(新設)

既に育児を行う従業員への措置として導入済みですが、今回の法改正で、介護する従業員が請求した場合にも、介護の必要がなくなるまで残業の免除を受けることができる制度の導入が新たに求められることになりました。

なお、管理職(労働基準法第41条第2号に定める管理監督者)については、自ら労働時間管理を行うことが可能な立場にあり、労働時間等に関する規定が適用除外されていることから、上記(3)と(4)の措置を講じる必要はありません。

(5)育児・介護休業等の取得要件及び対象家族の範囲拡大

ケースとしては多くないとは思いますが、今回の法改正で育児休業等における子の範囲が、法律上の親子関係にある実子・養子の他、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子も対象とすることとされました。

また、介護休業等の対象家族として、これまでは祖父母、兄弟姉妹及び孫の場合は、「同居かつ扶養」の要件が必要でしたが、今回の法改正でこの「同居かつ扶養」要件はなくなりました。なお、祖父母、兄弟姉妹及び孫については、いわゆる「血族」のみであり、姻族である配偶者の祖父母、配偶者の兄弟姉妹及び孫の配偶者は含まれていないということは、今回の法改正でも変更はありません。

(6)マタハラ等の防止措置

これまでも、事業主による妊娠、出産、育児休業・介護休業等を理由とする解雇その他不利益取り扱いは禁止されていましたが、今回の法改正では、それに加えて、今回の法改正では、上司や同僚による妊娠、出産、育児休業・介護休業等を理由とする職場環境を害する行為を防止するための措置を講じることが義務付けられました。
具体的には、[1]事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発、[2]相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、[3]職場における育児休業等に関するハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、[4]職場における育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置、[5]その他、プライバシー保護に関する措置等の義務が課されておりますので、就業規則(服務規律)に追加規定しておくことや社内ガイドラインを明示して啓蒙・周知ならびに防止に向けた社員教育に積極的に取り組むこと等が必要となってきます。

参考文献

厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp

アイさぽーと通信<vol.64>掲載

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